「彩葉様、そろそろお時間です」

「…わかってるわ」




次の日の朝。


とにかく私は憂鬱で仕方なかった。




もう登校しなければいけない時間で、それなのに私が部屋から出てこないから賢木がわざわざ呼びに来る始末。





「…どうかなさいましたか?」

「大したことじゃないから大丈夫」



…とは言うものの、この後のことを考えると気まずくてしょうがない。





「昨日のこともあります故、今日は大事を取って習い事全てキャンセルにしてあります。学校が終わりましたらゆっくりなさってください」

「うん、ありがと」

「では、参りましょう?」



賢木に促され、ようやく私は部屋から出た。





「おはようございます、お嬢様」

「…おはよ、椎名」



玄関まで行けば、いつも通り李樹が私を待っている。




"いつも通りの李樹が" だ。





「李樹」

「何?彩葉」



玄関を出て通学路に出れば、これまたいつも通りの彼氏モードの李樹が優しく私を見る。