夜ごはんはあたしの好きなからあげだった。


この夏に揚げ物なんてっていつもならお母さん、作るの嫌がるのに。



「じゃあ女友だちができそうなのね。よかったわ~」


「まーね。雰囲気の良い学校だよ」



女の子の名前、全然覚えてないけど。


それなのに、あの島田光太郎だけはしっかりフルネームで覚えてしまった。

なんかムカつく。



「しつこくてイヤな感じの男子もいるけどね」


「真衣。あれほど男の子とは仲良くしないようにって」


「仲良くしてないし! 向こうがやたらと話しかけてくんの! しかもすっごく感じ悪いんだよ」


「あら。あんたにたいして感じ悪い男子って、珍しいんじゃない?」



珍しいどころか生まれてはじめてだよ、あんな失礼な男。


からあげを口に放りこんで、乱暴に噛む。

ストレス発散だ。



「お姉ちゃん、今度は目立たないようにしてよ」



隣で静かに箸をすすめていた妹の真子が、ぼそりと言った。


顔をかくすような多めの黒髪の下で、今日も辛気くさい表情をしてる。