バスケットボールを何度シュートしても、リングに上手く入らないみたいに。
……あたしの想いも、あいつのもとへは上手く届かないんだよなぁ。
――ゴンッ!
部活が終わった直後の体育館に響く鈍い音。
それと同時にバスケットゴールのリングに勢いよくぶつかり、床の上で不規則に弾んでいるボールは、ついさっきあたしがシュートしたものだ。さっきの音を立てた犯人はもちろんそのボール、というかあたし。
フリースローラインから打ったにも関わらず見事に外れたそれを見て、シュートフォームのまま固まってしまった。
好きなだけ床の上で弾んでから転がっていくボールを見て我に返り、慌てて手を下ろしてそれを追いかける。
その後ろから「何やってんだよー」と明らかに馬鹿にした笑い声が飛んできた。
ボールを拾いながら振り返ると案の定、尚人(ナオト)のやつがニヤニヤと頬を緩めながらこっちを見ていた。
それを見て、やっぱりという思いが湧く。
……どうせ、何かしら反応するだろうと思ってたよ。シュートフォームに入る瞬間、あいつがこっちを見てることには気付いてたから。
「今日はえらく調子わりーみたいだな。スランプか?」
「……うっさいなぁ。あんたには関係ないでしょう!」
「ははっ、何ムキになってんだよ」
頭の後ろで手を組みながら、尚人が少しだけこっちに歩み寄る。その間も笑っている尚人に無性にイラついた。そして胸の奥がムカムカする。
何が面白いんだよ。一体誰のせいで、こんなにもムカムカしてると思ってるんだ。
さっきの外れたシュートだって考え事さえしていなければ入っただろうから、馬鹿にされるのはムカつくんだよ。
それに第一、尚人さえ見ていなければきっと入ったはず。
絶対に、入るはずだったんだ。
……尚人に見られて緊張していなければ、の話だけど。