ケータイ小説 野いちご

Love at first sight.

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どうしよ…九時間したらまた会える…。巽さんみたいな人が何で私なんかと会ってくれるんだろ…?暇潰し?気まぐれ?
きっと今まではエスコート?当たり前!な大人の女の人ばかりで、私が珍しいだけ?
そうだとしても明日も誘ってくれるなら…まだ希望はあるかな?私でもチャンス、あるのかな?
そんな事を考えながら鞄から出したハンカチをすぐに洗濯して、その間にお風呂に入った。
湯船に浸かりながら、何着て行こうかな?って考えた途端、急に不安になった私は慌ててお風呂を出る。クローゼットを開けてベッドに服を並べまくる。
巽さんと一緒に歩くのに不釣り合いなカッコは出来ないっ!
何通りか組み合わせて漸く決めたのは、グレーのボックスプリーツスカートに白シャツと下には白の無地キャミソール。足下はブーツでいいよね。
バッグも中身を詰め替えて、携帯を充電しながらはたと手を止めた。
お礼のメール…した方がいいかな?十二時すぎてるけど、失礼かな?

迷いながらもメールを送った。
もう寝てるのかな?

「おやすみなさい」

携帯にそう囁いてベッドに入る。すぐに振動した携帯に驚く。
【巽さん】
表示に慌ててメールボックスを開く。

―――――――――
こちらこそありがとう。また君に店以外で会えるかと思うと楽しみで仕方ない。
十時に迎えに行くよ。
―――――――――

何だか…ホントに夢みたい…家の前に着いた時、もうお店以外では会えないんだ…って少し寂しくなって。でも巽さんからまた誘ってくれて。
どうしよう……好き、かも…巽さんが。……世界の違う人なのに…。
パソコンで巽さんの会社のホムペを見てみたけど、すごく大きな会社だったし、取引先も有名な企業ばかり。
世界が違いすぎるのに……でも……。
私は巽さんが……。


翌朝はバタバタと慌てて用意をした。時間に余裕はあるけど落ち着かなくて。一時間前には準備出来たけど、まだ何か忘れてそうで不安で。
借りたハンカチはアイロンかけて鞄に入れたし、姿見で何度も確認したし。
何だかんだで三十分たってて、ふと外を見たら黒いBMWが停まってた。

「巽さんっ」
「早く着きすぎた。慌てさせてしまったか?」
「いえ…私も一時間前には用意出来てたので…」
「そうか…じゃあ行こうか」
「はい、お願いします」
「ああ、任せてくれ」

助手席のドアを開けてもらって、差し出された手を取って乗り込む。

「昨日もよかったが今日も似合ってるよ」
「あ…ありがとうございます。巽さんも…素敵です」
「ありがとう。選んだ甲斐があった」

シンプルなシャツにスラックス…巽さんみたいな人はどんな格好してもすごく素敵…背も高いし、躯も鍛えてがっしりした感じ。こんな完璧な男の人の彼女になれる人が羨ましい…。

巽さんは私を映画館に連れて来てくれた。
しかも!まだ公開前の試写会で、私も公開されたら観たいと思ってたラブストーリー!
すごくいい席に案内されて、ガラガラの状態なのに上映が始まった。何だか贅沢な気分…。ゆったりリクライニングになるシートに凭れて、スクリーンを見上げる。
悲恋→ハッピーエンドなありがちな展開の話なんだけど、すごく好きなのに好きだって言えなくて、でも諦めるなんて尚更出来なくて…。
気付いたら涙が止まらなくて…映画の中盤から泣きっぱなしだった私の涙を、指先で優しく拭ってくれた。

「すいません…私っ…」
「泣いてる君も可愛いな」
「か…可愛くなんかないですっ」

マスカラ…大丈夫かな…パンダになってたらどうしようっ!

「パウダールーム、行くか?」
「あ…すいません」

立ち上がる時も荷物を持ってくれた上、手を差し出してくれる。
この手を…どれだけの人が取ったんだろ……?


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