夏は好き。なぜならば夏休みがあるから。

だけど暑いのは大嫌い。アイスが側にあれば少しだけましになるけど。


だから、夏休み前の暑いだけのこの時期は、正直言ってただの地獄であり、期末テストが昨日までで終わったことだけがぎりぎり救いであり。

しかしこれ以上暑くなるとかもっと意味わからないのであり。

やっと梅雨が明けたのに、いまだにじめじめムシムシしているのが信じられないのである。


「千世。手水舎の掃除をしてこい。水盤が汚れている」


ああ、なんでこんなに太陽近いんだろ。一回沈んでほしい。冷静になってほしい。

クーラーがガンガンに効いた部屋で、かき氷食ってテレビ見て寝たい。


「千世。雑草が生えている。見栄えが悪いから抜いておけ」


あとセミ鳴き止んでほしい。うるさい。命短いからとか知らないし。わたし関係ないし。

セミって土の中ですごい長く生きてるって聞いたし。そのうえ10年以上潜んでるやつもいるそうじゃない。ジャンガリアンハムスターより長生きだ!


「おい、千世」

「うるさああああい!!!」


びくっ、と常葉の肩が揺れた。驚いた鳩が一斉に飛び出し、声の端が空へと消える。

のそりと体を起こして隣を睨むと、常葉は目をまんまるくして、わたしを見ていた。