荒れた工場地帯に
吹き抜ける生ぬるい風のなか
瓦礫の後ろに身をひそめる梨梨(りり)

そっと顔を覗かせ
周りを見渡すと、
ゆるく巻かれた髪がなびく

梨梨のぱっちりとした瞳は
地帯の中央にある怪しげな
廃ビルを見つめていた。


ビルは4階か5階くらいの高さ
部屋は暗いけど、
廊下でせわしなく行き来する
男たちの姿が目に映る

梨梨は視線を外し
顔を引っ込めた。


「何か見えた?」
隣にいる十和(とうわ)が梨梨に言う

十和は黄土色がかった茶髪を
揺らしながらそこにいた