ケータイ小説 野いちご

強引にされたら気持ち、揺らぐんだってば

丸一日、連絡待ってた


 翌日、まだアルコールが身体から抜けきらず、三連休が台無しになったことを悔やみながら今晩くらいは誰かと外食にでも行こうとスマホで名前を検索する。

 平日にゆっくり時間がとれる気の知れた人といえば会社の同僚くらいしかおらず、結局いつものメンバーになるかなと思案しながらメールを打ち込もうとしたところに電話が鳴った。

 なんとハルトだ!! ワイシャツは昨日クリーニングに出したので、今から取りに行けば渡せるが、今日は仕事が忙しいと言っていたのではなかったか。

 数秒考えて、電話に出る。

「もしもし、葉月です」

「ああ……。ごめんね、待ち切れなくてこっちからかけちゃった」

 まだ丸一日経ったばかりなんですけど。

「あ、あの、ワイシャツクリーニング出してますので。お急ぎでしたら今日でもお渡しできると思います」

「うん、じゃあ今日食事でもしようか」

 即提案するなあ。

「あ……はい。別にかまいません」

 そうくるかもしれないなあと思いました。仕事の予定が変更したとかで。

「今どこ?」

「家です」

「じゃあ迎えに行く。まだ一時間はかかるから」

「はい、その間にクリーニング取りに行きます」

 さっそく食事かあ……2人で?

 というわけで、ユウジも誘おう。

「もしもーし、葉月です」

「おー、あれからどなった?」

「いや、そんなことより今どこです?」

「え、車の中。家帰るとこ」

「……今から食事に行きません?」

「ええよ。どこ行く?」

「えと、ハルトさんが今うちに来てるので、とりあえずうち集合で」

「え、じゃあまあハルに聞いてみるわ」

「何を?」

「俺が参加してもええか」

「え、別にいんじゃないですか?」

「いやまあ一応……とりあえず聞いて、折り返すから」

「はーい」

 別にいいじゃん、2人の食事が3人になったって……。

 予想通り、すぐに折り返し電話がかかってくる。

「はい」

「とりあえず3人でええって」

「でしょー!? ハルトさんはそんな1人増えたからって言いませんよ、何も」

「いやー(笑)。なんか店聞いたからそっち行っとくよ」

「はい」

 んで予告から10分過ぎて、ハルトは自宅に現れた。

「ごめん、お待たせ。飛ばしてきたんだけど、渋滞にひっかかっちゃって」

「大丈夫ですよ。予め電話もしてくれたし」

 ハルトは当然のように、運転席から降りて助手席のドアを開けてくれる。これに慣れるって怖いなあと思いながら乗り込み、シートベルトをかけた。今日は席は、きつくない。

「ところで、なんでユウジ誘ったの?」

「え、いや、別に意味はないですけど……。あの、ワイシャツありがとうございました。後ろ置いときますね」

「うん、それはいいんだけどさ」

「え、まずかったですか?」

「いやまずくはないけどさ」

 ならいいじゃんか、だってもう来るんだし!!

「いや、今日は2人で食事したかったなあと思って」

 ならあなたが断ればよかったじゃん!!

「ゆ、ユウジさんいたら楽しいじゃないですか!! それに、昨日どうなったか気になってたみたいですし」

「いやまあ、そうなんだけどね……」

 何が言いたいんだよ……。

 その後は、ようやく3人でイタリアンを食べた。このメンバーだと実に面白い。明日昼から仕事だからこのまま飲みに行ってもいいのに……と思っていたのに、すぐに別れてしまう。

「どっか……バーでも行く?」

 帰り道、だからってハルトに誘われて、2人でという気分ではない。

「いや、今は飲む気にはなりません。この前のことがあるから……」

「あそっか……」

 しばし沈黙。車はとりあえず私のマンションがある方向に向かっている。

「明日仕事何時から?」

「昼からです。11時すぎに家出たら充分です」

「そっかあ……僕も昼からがいいなあ」

「頑張って仕事してください」

「いつも頑張ってるよ」

 ちょっとムキになられても……今は単に、会話を埋めたかっただけです。

「ちょっとドライブしようか……その辺。いい?」

「え、はい」

 この人にドライブをしようと誘われて、嫌だと断る人なんか、多分いない。

 車はとりあえず方向転換し、どこかへ向かって走り出した。

「あのさ……僕ずっと連絡待ってたんだ」

「あ、すみません……あの、その、昨日の今日だったので……」

 そりゃそうでしょう、普通。昨日会って、まさか今日電話かけるなんて、考えにくいでしょう!?

「……あのさ……」

「はい」

「……ちょっと車停めるよ」

「え、はい」

 車はフェリー埠頭の駐車場にさっと入った。もちろん人気などなくトラックが数台停車している程度だが、その方が助かる。何せ、人気に敏感な人物だ。

 車は駐車場を通り抜け、細道を知ったように走る。この先に一体何があるのだろう。

「ここ……フェリー乗り場ですか?」

「うん、けどちょっと散歩できるような場所があるから」

 へー、穴場のデートスポットなの? 

 着くなりすぐに停車したが、アイドリングのままでエンジは切らないつもりのようだ。

「実は今日用があって仕事を早めに切りあがらせてね」

「え!? そうだったんですか……あ、もしかして服、これ仕事で着る服だったんですか!? 急ぎでしたか!?」

「いや、服はいいんだよ」

 あそーですか。

「どうしても、外したくない用だったんだ」

「あ……なんか、すみません……」

 謝ってる理由が自分でも何か分からないけど、言わないよりマシな気がした。

「違うんだよ。全然……」

 言いながら、苦笑している。いや、あなたがなんかぶつぶつ言ってるだけで、こっちには全く伝わらないんですけど!?

「もう! 君……言わせる子だねぇ」

 ハルトはこの上なく上機嫌といった風で、歯を見せて笑った。なんとなくつられて、私も笑う。

「じゃあ、紗羅ちゃん。今日僕は何の用があったでしょう」


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