ケータイ小説 野いちご

きみと泳ぐ、夏色の明日

8M  まだ涼風は吹かない


***


それから数日が経って今日はあの土曜日。


『すず、起きてる?』

枕元でスマホが鳴っていて渋々出るとそれは紗香だった。


『んー起きてるよ……』

本当は今すぐにでも二度寝したい気分だけど。


『駅前の噴水の前で待ち合わせだからね。時間は……』

『心配しなくても大丈夫だよ』

紗香はきっと私が逃亡すると思ってるに違いない。だからわざわざ電話までしてきたんだって分かってる。


関東大会には学校代表ってこともあり服装は制服になった。現地集合だけど紗香とは最寄り駅で一足先に合流する予定になっている。


「あら、すずが寝ぼけるなんて珍しいわね」

リビングに行くと入れたての熱いコーヒーをお母さんが飲んでいた。


「寝ぼけてないよ。今日は学校行事があるの」

私が休日なのに制服を着てるからそう思うのもムリはないけど。


「学校行事?聞いてないわよ」

だって言ってないもん。


「紗香と待ち合わせしてるからもう出るね」

「え、ちょっと。朝ご飯は?」

「途中で食べるからいい」


なんで私が隠しごとをしなきゃいけないんだって話だけど、水泳の大会に行くなんて、どうしても言えなかった。


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