その日あたしは、その夕焼けに見とれた。

なんてことはない、川辺で見た夕焼け。

落ちていく橙色の提灯が、じゅうんじゅうんと彼岸、高さもバラバラな町並みの歯に、削られていく。

カシャッ、と、いつの頃からか持ち歩くようになっていたデジカメで、私は本能的に夕焼けを撮っていた。

手の中、縮小された風景の出来具合、思わずほくそ笑む。

「いい写真は撮れましたか?」

「!」

といきなり、背後で声がした。

驚いて振り向けばそこには、犬を連れた青年がいた。

二十歳くらい?

いや十代……中学生じゃない……高校生……?

にしては落ち着き払っていて、社会人にしては、子供っぽい表情。

パッとして、青年としか言えない男が、いた。

青年は、あたしがなかなか答えないでいると、

「あ、すみません、いきなり。私も、よく空を見るので。綺麗な夕焼けですよね、今日」

「……そうですね」

どうやらこの青年の一人称は『私』らしい。

不思議な青年だ。