ある日橋を渡っていたら、夕日がものすごく綺麗だった。

まるでてんとう虫みたいに鮮やかなオレンジ色が、沈んでいく。

私がいる橋から、夕日との間には鉄橋がかかっていて、電車が真横に黒い線となって過ぎていった。

そして、いっちばん記憶に染み付いたのは、夕日にきらめく川面だった。

ダイヤが百個って言われたって、私には想像できない。

でも、夕日に照らされて、水面が黄金色にきらっきら光ってるって言われたら、すごくわかる。

綺麗だった。すごく綺麗だった。ううんもっのすごく綺麗だった。思わず橋のど真ん中で立ち止まってしまったくらいに。

その時、あれ? って気付いたことがあるんだ――と言ったら、

「なに、それ?」

私の隣にいる彼が、ぽつりと訊ねてきた。

私とおんなじコーヒーを飲む彼は、かちゃんとソーサーにカップを下ろした。

意味なんてないけど、その動きをじっくり観察し終わってから答えた。