紫音には、危険な香りがする。

 ……スゴく。

 もし……もしも。

 このヒトを好きになってしまったら……

 彼の好きなようにされて、捨てられてしまうかもしれない。

 ホストクラブで見かけた、あの女の人みたいに……

 ……そんな怖さがあった。

 紫音には。





 それでも。



 まるで、断崖絶壁から、下を眺めて見たくなるような危うさで、紫音にもっと近づきたくなる。

 ……吸い込まれるように。

 それが、とても怖かった。


 このヒトを好きになってはいけない……



 神様か、悪魔か、それともわたしの本能なのか。



 耳元で囁かれるその言葉に、わたしは、小さくうなづいた。