「僕は尊敬してますよ、上司として」
 
 自分の夫をこのように褒められ、悪い気がするはずもなかったが、これといって、良い気分になれるようなものでもないのが不思議だった。

 本日も目の前には、2つの弁当がある。彼の弁当は毎度のことながら丁寧に作り上げられており、それが、手間暇をかけて育てられた息子の証だとでもいうようだった。

「だから、園田 (そのだ)さんも、毎日お弁当作ってあげてるんじゃないですか?」

 彼に苗字を呼ばれることがほとんどなく、一瞬他人を呼んでいるように聞こえた。

「えっ、えーとまあ、いろんなついでで……」

 夫を尊敬しているからお弁当を作ってあげているということにしっくりこなかったので、適当に答えただけだが、吉永はそこを逃さず、

「そういう時は、そうですよ、の一言でいいんですよ」