「友梨、最近なんか楽しそうじゃないよね」
「いきなりなんですか」
静かに吹いた生温い風が自分達を煽る。
屋上のフェンスに肘をついて、下を見下ろしながら結菜は言った。
「楽しそうじゃないってなにが?別に普通だけども」
「えー。それはないでしょ。明らか詰まんなそうな顔してるって」
「どうだか」
ぱたぱたぱたぱた。掌で自分に微量の風を送りながら返す。
そこで、くるりと結菜が私を振り返る。
「…まあ、友梨が良いなら別に良いけどさ」
「そうだよ。あんまり人のことを模索しない方がいいですよ」
「楽しい?学校生活」
「普通じゃない?」
結菜は若干着崩した制服で、またフェンスに手をついて下を見る。
「なにかあるの?」何気なく、持っていた携帯をぱたん、閉じてから問い掛けた。
「いやあ、青春してらっしゃるなー、と」
「はい?」
「やっぱさ、部活動って青春だと思うのね、あたしは」
「あー…そりゃ良かったですね」
よく意味の理解しがたいことを呟いたまま、結菜が笑う。