次の日、直樹との待ち合わせ場所に向かう。



『遅ぇよ!遅刻すんだろ!』


「ごめん!髪型が決まらなくて!」


『走るぞ!』



「ちょっと待ってよ!」



走り出す直樹の鞄を掴む。


『おい!ズルするなよ!自力で走れっ!』



「そんな事したら置いてかれるもんっ!」



直樹、足がすごく速いんだよね。直樹のペースで走られたら、あっという間に置いてかれる。


それにね、こうして走ってる間は、直樹に近づける。


鞄を通してだけど、触れていられる。
だからいつも、待ち合わせ時間ギリギリになるように、わざと遅く家を出るんだ。言ったら怒られるから死んでも言えないんだけど。



学校が近づいて、直樹の走るペースがゆっくりになる。



『ここまでくれば、もう間に合ったも同然だな。』



「ハァ…ハァ…。」


息切れして話す事もままならない私と違って、全然余裕の直樹。




『おい鞄からいい加減手、離せよ。クラスのやつに見られたらからかわれるだろ?』



「…ごめん。」


ちぇっ。今日もダメだったか。いつもこう言われて、距離を置かれるんだよね。


私はもっといちゃつきたいのにな…



名残惜しい気持ちで直樹の鞄から手を離す。


校門をくぐると、直樹はさっさと友達を見つけ、そっちの方へ行っちゃった。

.