* エピローグ


冷たい風が、ふわりと吹く。
漆黒のワイバーンは雄叫びを上げる。
それはまるで、悲鳴のような声だった。

白い小さな光の屑となり、ワイバーンの体が消えていく。
ディオンの体も、温もりを失っていった。

「セリシア……」

ディオンを抱き寄せたままのセリシアは、唇を噛み締めて、必死に涙を止めようとしている。

「……心が、張り裂けそうに痛いんだ」

震えた声で、呟いた。
フェイはそっとセリシアの頭を撫でる。

「悲しいときは、思いっきり泣けばいい。我慢なんて、何もしなくていいだ」

まるで糸が切れたかのように、セリシアはディオンの肩に顔を埋め、声を出して泣く。冷たくなったその体が、さらに涙を溢れ出させた。

「十五年も待ったというのに……」

男の声が聞こえてくる。
振り返れば、顔の半分が火傷の痕に覆われている男が、廃家の壁に手をつきながら立っていた。
頭からは血を流している。