ケータイ小説 野いちご

世界の終わりに、君は笑う

* プロローグ




* プロローグ


ザァザァと音を立てながら、雨が降り落ちている。
薄暗い森の中を、フードを被った二人の子どもが走っていた。
離れないように、強く握り締めている二人の手の甲には、薔薇よりも紅く、麗しい紋章がある。

「もっと、遠くへ逃げないと……。じゃないと、奴らに捕まってしまう」

男の子が言った。

「そんなの、嫌だよ」

痛いと悲鳴を上げる足を必死に動かしながら、女の子が言う。
息を切らしながらも、二人は雨の中を走り続ける。
少女が泥に足を滑らせ、勢いよくその場に倒れ込んだ。
強く手を握り締めていたせいもあり、男の子もまたつられるように倒れる。
二人の服は泥だらけになり、さらに汚れた。

「大丈夫?」

差し伸べられた手を握り、ふらりと彼女は立ち上がる。
サファイアブルーとスカーレットのオッドアイが、虚ろだった。
男の子は彼女をおぶり、再び走りはじめる。

「僕が、君を守ってみせるから」

女の子は答える気力もなく、ただ目を閉じる。
しばらく走り続け、森をようやく抜けようと、雨は降り止むことを知らなかった。
古びた廃家が目に入る。
決して人が住めるというものではないが、十分に雨は凌(しの)げる。

外から見えないように廃家の奥へと足を踏み入れて、ずぶ濡れになった外套(がいとう)を脱がせ、壁に背を預けるように、女の子を座らせた。
うっすらと、彼女は目を開ける。



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