体にまとわり付く禍々しい空気。
 
暗雲に呑まれていく茜色の空。目の前にいる友人達の姿さえ、隠してしまいそうな深い闇。

 
来るべき時が来た。
 
6人全員とも、それを感じていた。


「……邪空間を出現させるための、時間稼ぎだった、ってことね」
 
紅葉が低い声で言った。
 
皆、不安を隠せない表情で暗黒の空を見上げた。

「あのさ。……邪空間が出たってことは……。ヴァジュラを倒さなくちゃいけないんだよな?」
 
蒼馬の問いに、皆彼を見る。

「そうだな」
 
真吏が当たり前だ、と言わんばかりに頷く。

「はあ……。本当なんだな……」
 
実感が湧かないのか、蒼馬は惚けた顔をしている。

確かに、蒼馬の気持ちも解る。

この一ヶ月、修行をしていたとは言っても、それは明るい空の下でのこと。実際に現実に有り得ない光景を前にして、尻込みしてしまったのだ。

「とにかく、邪空間の近くに行かないと。あんなものが現れたりしたら、何か被害が出てるかもしれないよ」
 
しっかりした声で蓮が言う。
 
一番ほんわかしている蓮が力強く言うので、皆は意外に思う。ただ、紅葉を除いて。

「そうね。圭一郎さんに連絡してみるわ」
 
と、オレンジ色の携帯電話を取り出す。