それからひと月──。
 
夏休みを丸々潰しての修行は、ようやく成果が表れてきた。
 
最初のうちは無意識の内に力を使ってしまい、紅葉が提供した修行場も別荘も、常に半壊状態だった。

気を抜くと自分達も無事では済まないので、否応無しにコントロールは上達した。紅葉の鬼のような特訓も功を奏したのだが。



「はっ!」
 
地面を力強く蹴り、蒼馬は高くジャンプした。狙いは少し離れたところに立ち、剣を構える親友、聖。
 
降下しながら大気中にある“気”を操り、己の武器である剣を手にする。聖はそれを見て、手にしていた剣を逆手に持ち直した。

「いっくぞお~!!」
 
蒼馬が思い切り剣を振り落とす。聖も剣を振り上げ、腕を交差させてそれを受け止めた。
 
上からの攻撃なので、かかる力は相当なものだ。グッと奥歯をかみ締めると、蒼馬の剣を流しつつ横に飛んだ。
 
逃がさない、と蒼馬は逃げる聖を追う。そして更に剣を突き出した。
 
それより早く体勢を整えた聖は、しっかりと地に足を構えると、剣の切っ先をかわし、身を低くして蒼馬の懐に潜り込んだ。

「うっ」
 
蒼馬が「しまった」という顔をする。


「そこまで!」

 
紅葉の声が響く。