「輪廻。」

愛おしそうに私を呼ぶ夜くんの声は、かすれ、消えてしまいそうな程、小さかった。
途端に彼が、とても弱い生き物に見えた。
けれど、瞳だけは強い光を宿している。

「輪廻。月城 輪廻。
黒く、艶やかな髪も、俺を捉えて離さない瞳も、誇り高い鼻も、そして俺の名を呼ぶ愛しい唇、滑らかな輪郭。
体中から、君は愛を放つ。
愛される為に産まれてきた様な存在だ。
君の存在全てが、俺の生きる意味なんだよ。
だけど君が泣くのなら…。」

夜くんの掌が、そっと私の頬に触れた。その掌は温かいのに、指先だけがゾクリとする程、冷たく感じた。

「もう、壊してしまおう。」