どんっとぶつかったのは、偶然だった。

「あっ、ゴメンなさい」

マカは素直にすぐに詫びた。

「いえ、こちらこそすみません。マカ先輩」

名前を呼ばれ、改めて相手の顔を見た。

「アラ、あなたは確かミナと同じ部活の…」

「はい。手芸部の現在の副部長をしています」

高校三年になった今、引退はしたものの、ミナはかつて手芸部の副部長を務めていた。

そして引退間際、後輩の彼女に副部長の座を譲り渡したのだ。

「ぶつかってゴメンね。ちょっと受験のことで頭悩ませていたの」

「わたしの方こそ、気が散っていたんです。今度、手作りのアンティークドールを競う大会がありまして、そのことでぼ~っとしていたんです」

そう言って彼女は持っていた本をマカに見せた。

アンティークドールの作り方を載せた特集本で、思わずマカの表情が強張った。