彼女がその店を見つけたのは、偶然だった。

高校からの帰り道、持病の心臓の痛みに襲われ、つい建物と建物の間の細い道の間に入ったのだ。

苦しんでいる姿を誰にも見られたくなかった。

心臓の痛みは大人しく耐えていれば、いずれ治まる。

薄暗い影に身を隠し、彼女は耐え続けた。

「はぁっ、はぁっ…!」

息を切らしながら顔を上げるも、その色は青白い。

ふと顔を上げると、道の奥に一軒の店を見つけた。

「あんな所に…お店が?」

彼女はゆっくりと立ち上がる。

何とか心臓の痛みは治まっていた。

壁に手を付きながら道を歩き、店の前までやって来た。

夕闇の中浮かび上がるその店は、どうやら小物や雑貨を扱う店らしい。

彼女は恐る恐る扉に手をかけた。

ベルの音が予想以上に高くて、驚いた。

「いらっしゃーい」

「いらっしゃいませ」

「いらっしゃい」

店内には二人の青年と、一人の女性がいた。

青年の一人はいかにも最近の若者という感じで、もう一人は真面目な感じがした。

そして女性は外国の生まれだろう。

けれど日本語がとても上手だった。

「いらっしゃいませ。当店へようこそ」