「蛍詩――!ただいまー!!」



空が見事な橙色に染まる頃。いつものように縁側から忙しない足音と明るい声が聞こえてきた。




「あ―ぁ…。泥だらけやん」


「にひひ!子供は外で遊ぶことが仕事やからな!」


ふふんと鼻を膨らませて希理は靴を脱ぐ。


「そんな偉そうにせんと水持ってこい。そんな汚れた足で家に入られたら困る」


蛍詩は泥まみれの足で平然と家に入ろうとする希理を制して、足早に布を手に縁側へ向かった。



「こんなか弱い少女に水汲ませるなんて男としてなっとらんで!蛍詩!!」


希理は体に対して少し大きいバケツに水を入れ、ぶつぶつ文句を言いながら縁側まで運んできた。


「全身泥だらけの女の子に言われたくないわ」


希理の持ってきた水に布を浸し、蛍詩は顔を拭ってやる。