4月8日、悠呀の命日。

喪服代わりの黒のロングワンピースを着て、ジャケットを羽織って家を出た。

買っておいた花と、斗真から託されたビールを持ってストリームに乗り込む。

今日だけはと、タオルにしまってある写真をクリップで中間のドリンクホルダーに固定した。

あいつがしてたように。

お墓までは高速で2時間位。

休憩もなしに走り続けた。

早く話したいとか。

会いたいとかより。

1年に1回の機会を無駄にしない為に。

時間が許す限り、居たいんだ。

私たちのデートが、そうだったように。

忙しかった私たちには、会える時間が貴重で。

大切にしていた。

悠呀に惚れたきっかけは、父親と同じ関西弁に、親近感があった。

本庁を初めて訪ねた時に、困ってた私に声を掛けてくれた。

お互い、一目惚れだったのかな。

お礼を言った後、連絡先を交換。

“「愛依の声聞いたら、また頑張れる。はよ会いたいな」”

それから会えない日の休憩時間に、決まってそう電話を繋けて来てた。

携帯に疎い私は、メールを保護する事も。

電話を録音しておく事も出来ず、何回後悔しただろう。

耳に残る声が、掠れて来てる。

胸に残る記憶は、色褪せそう。

もう二度と、聞けない。

見れない悠呀の姿と声。

斗真に、携帯について教えて貰ってれば良かったと、後から思った。

思い出より、後悔が大きい私を。

“馬鹿やな”って、笑ってくれるかな……。