六月、つゆのある朝です。

 シルクのようなきりさめが、神社の境内にとうめいなベールを下ろします。
しっとりやわらかい赤土は水色のアジサイを咲かせ、その葉っぱの上でカタツムリがゆっくり散歩を楽しんでいます。
 松の木のきゅっとつまった香りとブナの木の優しい香りが、神社全体を包み込みます。


 子おには古いブナのご神木の中で、まるっ鼻をずずいとふかせてねむっていました。

 大きさはサッカーボールくらい、頭に一本角を持つ空色の子おにです。

 そこへ、でっかいふろしきをせおったひげもじゃ神さまがやってきました。
 ひげもじゃ神さまとは、この神社の神さまのことです。
 本当はもっと難しくてありがたい名前がありましたが、なにしろあごひげがもじゃもじゃだったので、みんなひげもじゃ神さまと呼んでいました。

 ひげもじゃ神さまは、こつんと子おにの一本角をこづいて言いました。

「子おにや、おまえにちとるすばんを頼みたいのじゃ。おきんしゃい」

「う~ん? るすばん~??」