『もう我慢できません。ごめんなさい。 母より』 小さなアパートに遺された手紙にはそれだけだった。 理由とか言い訳とかすっ飛ばして俺は見放されたんだ。 変わらないと思っていた日常はいとも簡単に崩れる。 ただ漠然と寂しさが怒りへと変わる瞬間を感じていた。 小さな部屋には、やけに大きく響く時計の音と灰色の居場所と俺。 五月の雨がしとしとと降りはじめた。 .