制服は夏仕様から冬仕様へ変わり、外はとても寒くなった。


「違うよ、これはYを代入して、あ、うん、そう!」

「スゲぇ、橘の教え方、とっても分かりやすい!」



“橘”

呼ばれる度に、ドキドキが大きくなる。


「これで俺、今回は点稼ぐことできるかも!」

「うん、お互い、頑張ろうね!」



――数学を教えてた時だった。


図書室の扉の所に、一人の女の子が立っていた。


…見たことある。

赤毛の髪がフワフワで、とっても目が大きい子。




「………結斗」


私がボーッとしてる内に、私達が座ってる目の前に、女の子は来ていた。



「……ひどいよぉ。結斗、私を一人きりにしないって約束したじゃん…」


いきなり泣き始めたその子は、私をニランだ。



「アンタが結斗を誘惑したんでしょ?最っ低!」


バチンっ

ピリピリした痛みが、頬を襲った。


殴られ…た?


「行こ、結斗」


ああ、松村くんも行っちゃうよね。

やっぱり、馴れ馴れしいんだよ、私。



「謝れよ。橘に」

恐る恐る下げていた顔を上げると…


目の前には松村くんの背中。