オレの妻、朱音は、流産してから数ヶ月後、再び妊娠した。


今でも、ハッキリ覚えてる。


「星哉…あの…ね?
妊娠…したのっ…!」


そう言って、お腹を大事そうに撫でながら嬉しそうに報告してきた姿を。


嬉しさのあまり彼女を抱きしめて頬に軽くキスをした後、


「今度は…絶対産もうな。」

そう言った。


そのときは…今度こそ、無事にオレと朱音の子供を世に送り出させてあげられる…

そう信じてた。


だけど…こんなことになるなんて…思っていなかったんだ。


俺はある新聞社で新聞記者として働いていた。


任されている記事は主に子供に関することが多い。


子供が蒟蒻ゼリーによって窒息死した事件の記事を書いたときは…胸が張り裂ける思いだった。


と同時に、自分の子供はこのような目に遭わせるワケにはいかないと、強く思った。


収入は…新聞社に勤める人の中でも高いほうに入る。
このまま毎日仕事して、いずれは育児休暇でも取るか…とか思っていた…

その矢先のことだった。


上司から言われた一言。


「この会社は…経営が危ない。
破産申請をしなければならないかもしれん。」


え……


そして、それから2週間も立たないウチに、会社は破産して、オレは職を失った。