「私は貴方の供なのです!きちんと説明していただかねば仲間にも顔向けできませぬ!!」

 りいはきっと道満を睨んだ。もとが凛々しい顔立ちのため、かなりの迫力がある。

 道満は面倒臭そうに頬を掻いて、

「俺そこの小僧と術比べしてえんだが」

「説明してからにしてくださいませ!」

「利花ー、お前ずいぶんお固い性格に育っちまったなあ…昔はかわいかったのによ」

 はあ、と息をついて、道満は腰を下ろした。


「小僧、ちょっと待っててくれや。供が煩いんでな」

「…俺はかまいませんからちゃんと説明してくださいよ。かわいそうじゃないですか」

 晴明が腕を回しながら言う。りいを押さえつけるのがかなり大変だったようだ。

 無理もない。りいは道摩法師とは言え、方術より剣術や体術を得意としている。腕力で同年代にはそうそう負けない。


「…『山』に行くんでな」

 りいははっと息を呑んだ。

 確かに、りいはそこには入れない。

「…ですが!なぜ今回に限って?いつものように麓でお待ちしますのに」

「…いや、まあ…色々とな、あるんだ」

 道満は口を濁した。


「…それに、利花にも同年輩の友達ってやつがいてもいいかと思ってな!」

 道満はにっと笑う。


 ごまかされた。

 それはわかるが、しかしりいはそれ以上追及できない。

 『山』に行く。それは道摩法師の頭としての行動である。

 りいに口出しできることではない。

 そして、道満が嘘を言っていないことがわかる程度には、りいも賢い。


「わかり、ました…」

「…仲間には俺から言っておく。お前はしばらくのんびりしろよ」

 道満がりいの頭をぽんぽんと軽く叩いた。