「はぁ~。手がかじかむなぁ」

白い手に白い息を吐きかけ、九曜は顔をしかめる。

実家の神社の敷地内を、竹箒で掃除するのが九曜の役目だった。

今も袴姿で、広い敷地内を掃除する。

「神無月先輩も同じことしてんのかな?」

ふと一つ年上で、同じく神社の跡取り娘の神無月のことを思い出す。

けれど竹を割ったように、さっぱりきっぱりした性格の彼女なら、文句一つ言わずに掃除をする姿が頭の中に浮かんだ。

「…まっ、神無月先輩なら真面目にこなすか。依琉先輩なら、あの美貌を活かして誰かに押し付けるだろな」

神無月と同級生である依琉は、学院の中でも外でも類を見ないほどの美貌を持つ。

しかし腹黒さもまた、類を見ないほどだった。

「雛先輩は文句言わずに楽しそうにやるけど…いろんな物、破壊しながらやりそうだな」

神無月、依琉に続いての一つ上の雛。

パっと見は外国のアンティークドールの美しさを持つが、その力は人並み外れであることを、九曜は知っていた。