最近小説が書けない。全くもって書けない。でも…理由ならわかっている。あの出来事があってから、何をしても 何を書いても全然上手くいかないのだ。佐野は確かに大切な存在だけど…それ以上でもそれ以下でもない。答えなんかない筈なのに、同じ事がグルグルと頭の中を廻る。不思議な程に 溜め息ばかりが募るのだった。

奈々沢:「…おい…。…オイって!!」
一ノ瀬:「…!?」

突然の大きな声に驚き、椅子から転げ落ちる。振り返ると 奈々沢が不思議そうな顔をして立っていた。

奈々沢:「だ、大丈夫かよ?」
一ノ瀬:「びっくりさせないでよ…もぉ!!…いつから居たの?」
奈々沢:「さっきから居たよ(笑)。ずっと呼んでたのにボーッとしてるから…」
一ノ瀬:「…え!?…あ…ゴメン、気付かなかった…」
奈々沢:「…何かあった?」
一ノ瀬:「な、何もないよ」
奈々沢:「変わらないな、嘘付くと視線がおよぐクセ(笑)」

人の心を簡単に読み当てるなんて、やっぱり幼なじみは侮れない。何より、一番単純な奈々沢に言われた事が 何よりも悔しかった。