別冊マーガレットで咲坂伊緒さんの新連載『アオハライド』が始まりました。


本編の第1話は主役の吉岡双葉・馬淵洸(まぶちこう)が高校で再会する話で、別冊ふろくで中学での出会いと別れの第0話が載っています。

中学の時、お互いを意識して好きになりかけていたのに、ちょっとした行き違いからふたりの関係は途切れ、その後馬淵は(このころはまだ両親が離婚前で、名字は田中になっている)引っ越してしまいます。
誤解をされたまま、もう会えなくなってしまったことに胸を痛める双葉。

過去においてのこの後悔が、双葉の馬淵へのさらなる恋の原動力となっていくようです。きっとこれからも、双葉は馬淵を「昔好きだった恋の相手・田中」として見ていくはず、でした。

しかし本編で洸ははっきりと双葉に言います。

「俺馬淵だから」「田中洸はもういないよ」

洸にとって、きっと「田中洸」という時代は忘れたい忌々しい過去なのでしょう。そんな洸の昔の自分を否定するような態度。もちろんその過去に属している双葉との関係も認めるわけにはいかない。きっと双葉が過去を引きずり出そうとしたら、断固拒絶することでしょう。そして双葉が、自分の存在が彼の苦しみの元になっていると気づいたとしたら…
彼女もまちがいなく苦しむことになるでしょう。男子にモテることで女子に嫌われることを異様に恐れる双葉のことですから、そういった“他人の心に敏感すぎる”彼女がその事に気づかないはずがありません。


では、好きだった人のために自らは身を引くのが正解なのか?


双葉にとって、中学の時の洸との思い出は「後悔は残っているがかけがえのない宝物」としてしっかりと心にあります。自分の信じているものに蓋をしていていては、過去に閉じ込められたままどこにもいけないし、未来もない。
洸が過去を否定することで現在の自分をゆがめているとしたら、その過去を肯定してあげるのが双葉のつとめでもあり、役割だと思います。


過去を取り戻すことで未来に走り出せる。


そう信じて見守っていきたいと思います。