「戒(カイ)」

 呼ばれて振り返ると、老齢の男が戒に軽く手を挙げていた。

「烈(レツ)か」

 烈と呼ばれた50代半ばの男は、その年齢にふさわしい笑みを浮かべてゆっくりと戒に歩み寄る。