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翌朝。

いつもよりも少し早めに学校に向かい、まだ人の少ない校内を歩き、暗室へと入る。


そこにはいつもと同じように啓介くんが居て、ゆったりとした空間で小説を読んでいた。


私と目が合うと、にっこり笑いかけて、隣に来るようにと優しく手を伸ばす。


「おはよう、結城さん」

「おはよ」


結局、啓介くんは私の名前を呼んではくれなかったけど……でも、「それでもいい」と思えるほどに心は晴れやかで、そして温かだった。




「……おーい、お二人さーん。 朝からラブラブですかー?」

「へ? うわっ!! 犬飼くん!?」



ドアを開けた犬飼くんが、呆れた顔で私たちを見てる。


「おはよう、良太郎」

「はいはい、おはようございまーす。
ねぇ啓介、二人きりになれる場所だとしても、暗室でエロいことしちゃダメだよー?」

「あぁ……その手があったか」

「うわっ、もしかして俺、余計なこと言っちゃった?
くそぉ、啓介の馬鹿ー。 俺の奈央ちゃんに何かしたら、許さないからなー?」

「はいはい、わかったわかった」


平然と座ってる啓介くんと、それを見て楽しそうに笑う犬飼くん。

そんな、いつもと変わらない二人を見て、私もいつもと同じように笑った。




「そういえば渉は? まだ来てない?」

「あー…… いつもはもう来てる時間だけど、今日はまだだね」

「えー残念!! 昨日のさゆとの話が聞きたかったのに」

「聞かれるのがイヤで来ないとか?」

「いやいやー、渉は話したがるタイプじゃん?
もう教室行ったのかなぁ。 よっしゃ、みんなで見に行こー!!」


……ということで。

私と啓介くんは、犬飼くんに促されるまま教室へと向かった。