「うーっす」


朝、八時。

私は気だるさを隠さない挨拶と共に、バイト先の控え室に入る。


返ってくる挨拶はない。


店長のおっさんは既にカウンターに入っているし、もう一人の朝番の後輩はいつもギリギリに来るからだ。

だから返事が無いのは、決して私が嫌われてるからじゃない。

嫌われてるからじゃないぞ?


だっせー制服に袖を通して、鏡の前で身嗜みを整え、軽くストレッチ。

最近体が硬くなり易いから、入念に。


ま、給金分しっかり働く為に必要な、スイッチの切り替えみたいなモンだ。

金貰ってんだからさ、ちゃんと労働力やっとかねーと泥棒と変わらねーだろ。


他のバイト連中は、適度……いや大分力を抜いてやってるみたいだが、私はその辺の加減が不器用だ。

抜くっつーと、マジで動かなくなっちまう。

だから、いつも全力。

花丸満点の笑顔で、今日も今日とて胸焼けする程のドーナツを売りさばくのだ。