空には暗雲が広がり、辺りは暗闇に覆われていた。

風が吹き荒び、それに乗って大粒の雨が勢いよく地面に叩きつけられている。

道路には川のように水が流れ、そこを通る影などまったく見受けられなかった。
 
そんな嵐の中、少年がひとり、立っていた。
 
激しく体をなぶる風も雨もまったく気にすることなく──いや、気付いていないのか──虚ろな瞳で佇んでいた。

(ここはどこだろう…)
 
ぼんやりと考える。
 
ひどく頭が重かった。痛かった。顔も、首も、腕も、胸も、腹も、足も、どこもかしこも痛い。

何故こんなにも痛いのだろう? …考えても分からない。
 
少年は空を見上げた。
 
雨粒が容赦なく頬を叩いた。──痛い。顔も痛いけれど、それ以上に……胸が。
 
目頭が熱い。
 
雨に打たれて冷たくなった頬に、暖かいものが流れていく。