席替えからはや1週間。
今日も授業が集中して受けれない。
「なぁ、田中、昨日の野球見た?」
「見た。
あれヤバかったよな!」
一時間目から興奮した二人は私を挟んで大音量で喋り出した。
おーい、聞こえないって。
「俺、思わず馬鹿って叫んだ。」
今、まさに今、私はあんたに馬鹿って叫びたい。
「なあ、宮崎は見た?」
ノートからゆっくりと顔を上げる。
「…。
悪い。」
わかればよろしい。
私はまたノートに目を落とした。
あんたら、受験大丈夫なの?って聞きたい。
授業聞いてなかったらわかんないよ?
他人事ながら、少し心配。
まあ、村井は賢いらしいけど。
本当のところはどうか知らないけど。
と、はしゃいで話す二人の横を先生が冷気をまといながら通り過ぎた。
「じゃあ、今からリスニングするけど、田中と村井に答えてもらおうかな。」
美人だと評判の英語教師も今は鬼に見えるだろう。
ビクッと肩を震わせる村井を見ながら、私はそっとため息をついた。
つかつかと教卓に向かう先生を目で追いながら、村井は弱々しい声を出した。
「頼む、教えて。」
私はクスクス笑いながら頷いた。