こうしていても仕方がない。再び車を走らせようとサイドブレーキに手をかける。

「!?」

 しかし──ベリル側の開かれていた窓から彼のこめかみに銃口を突きつけている人影が少年の視界に映る。

 驚く少年をよそに、銃口を突きつけられている本人は無表情で目だけを向けていた。

 銃身には円筒形の物体が取り付けられている、消音器(サイレンサー)か。

「降りろ」

 男が発した英語には独特のなまりがあるようだ。

 ベリルは手を挙げてゆっくり車から降り、少年も同じように車から降ろされる。

 顔を布で覆った男が2人……1人はアザムの腕を掴んで引き寄せ、1人はベリルに銃口を突きつけたままだ。