「え…」



「だから言ったろ。高梨学園に連れて行ってあげるってな」




…誘拐、されなかった。


中型バイクで拉致られたあたしは、赤茶色のレンガ造りの建物の前に居た。


あたしの視界には、“高梨学園”という立派な表札が存在していて。




「あ…ああっ…」




どうしよう。こんな親切な人を、あたし誘拐犯扱いしちゃったよ。


遅れてやってくる後悔に、あたしは顔を真っ青にさせながら、実はとても親切だった男の人をチラ見する。


透明感のある茶髪に、整った顔立ちを持っているその人は、なんだか爽やかキャラそのもの。



やっぱり、謝らないといけないよね…?




「あの…」



「なんだよ?」



「ありがとうございました…。で、誘拐犯扱いしてしまって、本当にごめんなさい…」




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