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『やあやあみんな。元気にしてるかな?僕、心配になってついつい出て来ちゃったよ』


まどろみをたゆたう意識が、そんな合成音声によって引き戻された。


まぶたを開けると強烈な光が飛び込んできた。


『あれから十二時間経ったけど、みんなどうしたのかな。全然進展がないみたいだね』


陽一は一つ欠伸をしてから前方の画面に姿を現したチェシャ猫を睨み付ける。


あれから、というのは多分藍原の一件からなのだろう。


時間を知る手だてがどこにも(腕時計や携帯電話)ないので憶測でしかないけれど。


それにしても、いつの間に寝てしまったのか。


光二と望美の下を逃げるように離れてからソファに戻り、考えて考えて。


気がついたら意識は既にまどろみの中だった。