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柔らかな感触があった。


懐かしい感覚。それに匂いさえも懐古をくすぐる。


いつの頃だっただろう。


この感覚と匂いの懐かしさの元は。


記憶を掘り下げるとともに急激に意識が醒めていく。


ゆっくりとまぶたを上げるとーー。


「おぉ。起きたねぇ~」


目の前には横向きの望美がいた。


そして何故か互いに互いの腰に手を回している。


柔らかい感覚はどうやら望美の臀部みたいだ。


「えと。お前、なにしてんの?」


「なにしてんの。とはご挨拶な事ですな。ここは私のソファだぞぅ」


望美はいつもの変に間延びした声で主張する。


黒のソファに溶けるように同化していた艶やかな黒髪がソファに流れ、望美の肌を僅かに隠す。


陽一は考える。現状を。


鑑みるに自分と望美は同一の、望美のソファにて向かいあうように横たわっている。


考察終了。