紙袋を提げて戻ってきた亜季は、歩いてくる達郎の姿を見とめた。

「ちょうど良かったみたいですね」

達郎は亜季の前まで来ると足をとめた。

その手には缶コーヒーを握り締めていた。

缶コーヒーは開いてはいなかった。

「手紙の差出人がわかりました」

達郎は貼り付けたような無表情で言った。

「そう、ですか」

亜季は達郎の言葉と表情に戸惑うような仕草を見せた。

心なしか笑顔も引きつったように見えた。

「あの、部屋に上がりませんか?もうすぐ友人たちが来ますけど」

「いやここで結構です」

「ではせめて中へ。外は寒いですから」

そう促され、達郎は亜季の後についてマンションへ入った。

マンションの玄関は高級ホテルのホールを思わせる造りになっていた。

ホールの左側には欧風のソファとテーブルが4組置かれており、達郎と亜季はそのうちのひとつに向かい合って座った。