稀「クロム!!!」
麗「クロム!?」

帰るなり、稀琉と麗弥の悲痛な声が聞こえた。


あの戦いの後…


俺はあの傷だらけの体でカフェに戻った。


まだ明るくなっていなかったから稀琉も麗弥も寝ているだろうと思っていた。


が…その考えが甘かった。


2人はばっちり起きていた。


どうやら、俺が帰るまで待っていた様だ。


麗弥の治療は済んでいたようで、包帯があちこちに巻かれていた。


そして、稀琉と麗弥が駆け寄ってくる。


稀「何、この傷!?」


麗「俺より酷いやんか!」

俺の傷…特に肩の傷を痛々しそうに見ながら2人は言った。


ク「少し切っただけだ。大したことない――」


俺がそう言うと…


稀「大したことじゃないじゃないよ!!」
麗「大したことやん!!」

と口を揃えて言った。


状況が状況なので、刹那も心配した様な言葉を口にした(因みにいつもなら“あぁ、稀琉と麗弥には見られない様にね”くらい)。


その後はおおよそ予想がつくと思うが………。


稀琉が「安静にしてて!酷い怪我なんだから!」と言って…看病を始めてきた。

確かにこの傷は酷いが…俺の体にとっては大したことない。


この傷だって…寝て起きたら殆ど消えて線の様になりやがて消えるだろう。


だが、俺の体の事を知らない奴等には言葉通り“大怪我”なのだろう。


こうして、こんな、なんでもない怪我を何日もかけて治す振りをしなければならなくなってしまった。


だが、傷はいつまでも残っているわけではない。


だから、せめてそう“見える”様に傷の様な物を残す必要があった。


だがら、呑気に…でも、何処か疲れた様な顔で帰ってきたロスに傷が残る様に頼むハメになった。