鏡台の前で棗は
長い髪に櫛を通す。
久しぶりに制服に身を包むと、
気分がシャキッとした。
今日から玲も登校する。
それに合わせて棗もまた学校に
通うことにした。
特に好きでもなかった学校に
戻りたいと思う理由が玲なんて
不純な動機だろうか。
学校にまた行くと言った棗に
菖蒲は何も言わなかった。
『好きな人がいるんです』
そう言った棗に帰ってきた言葉は
意外なことに
「今度会わせなさい」だった。
会わせればすぐに認めてもらえる
わけではないだろうが、
それでも母が言ってくれたことは
すごく嬉しかった。
玲は銃弾を受けておきながら
5日もたたないうちに
退院した。
昨日も退院の手続きをするために
病院で会ったばかりなのに、
学校で会うのが
待ち遠しいなんて。