──その場所は、地下にある。
特定の人間たちが出入りし、棲み着き、武装している。どこあるのかさえも隠され、誰に知られることもなく、彼らは犯罪世界で暗躍している。
数百メートルにも掘り下げられた地下は、数々の用途に別れて区切られておりその中に一際、違和感を放つ一室がある。
コンクリートが剥き出しの部屋とは違い、この空間だけはヨーロッパの宮廷を思わせる装飾が施されていた。
「この男は?」
四十代ほどの男は、眼前にひざまずく細身の男に威圧的な目を向けて低く問いかける。
自分が王にでもなった気でいるのか、宝石が散りばめられた玉座のごとき椅子に腰を落とし、天井から吊り下げられた大きなディスプレイに映し出される青年に眉を寄せる。
質素な色合いだが高価だと思わせる生地を使った優雅な服に身を包み、金色とも取れる不可思議な瞳は鋭く、背中までの漆黒の髪を乱暴に流している。