それから彼とあたしの奇妙な生活は始まった。



あたしはアフターやプライベートで何も約束がない日は、彼のマンションに帰って寝泊まりした。


彼、ユキは本当に不思議な人だった。



帰るとやはりホテルのケータリングのような夜食が用意されていて、それを一緒に食べた。



テレビを見るときはあたしをそばに起きたがって、膝の上に載せて耳の裏を子犬のようにクンクンしたりした。



とにかく匂いフェチなのかなんなのかはわからないが、あたしの匂いを嗅ぐのが好きだった。



週の半分以上彼の部屋で過ごす様になったあたしは毎度毎度、彼の部屋にお泊まりセットを持って行くのは億劫なっていた。



そのため、歯磨きやら化粧ポーチ、その他服など細々した女物が彼の部屋に徐々に増えていくはめになるのだけども、彼は何一つ文句を言わないばかりか、気にもとめていない様子だった。



しかし彼には君のものは僕のもの精神があるのか、文句は何一つ言わない変わりに、あたしの物は彼のものと見境なくなんでも勝手に使われた。



例えば朝、歯を磨こうとしたら歯磨きがなく寝ぼけた彼があたしのを使っていたりした。



買ってきておいたアイスがなかったり、冷蔵庫に入ったあたしの飲みかけのミネラルウォーターが勝手に飲まれていたり。


ある時出勤前にピアスがなくなっていて必死に探していたらなんと彼の耳についていた。



一応怒ってはみたもののごめんごめん。これかっこよかったからさあ。と流されてしまったし、その日それをつけたまま彼は出掛けてしまった。