「とっつぁん、居るかい?

ちぃと、ごめんよ」




 柚木 断十郎(ユズキ ダンジュウロウ)は、戸を開け、中に入った。




 断十郎は、鍛冶屋の戸が閉まっているのを、少し不審に思った。




 火を使う鍛冶は、閉めきった状態では、暑くて作業になるまい。




 そう思った断十郎は、戸が閉まっていたので、鍛冶屋が留守だと考えたのだ。




 だが、戸がすんなり開いたところをみると、鍛冶屋は出掛けているというわけでは、ないようだった。