「おかえりィ」
 昼間の喫茶店に戻ると、若いマスターの軽い調子の声が三人を迎えた。

 昼間、無色たちの話を聞いていたマスターは、ここに泊まるといいとしきりに勧めてきた。
 何でも夏休み中は、島の外から来る海水浴客のために、民宿の営業もしているのだとか。

 滞在中はいつも利用している宿泊施設があるからと言って断ろうとする無色に、マスターは強引に食い下がっていた。

「予約はもう、してあるの?」
「いえ、まだですけど──」

「だったらほらほら、たまには違う場所に泊まってみなよ? 頼むよー。夏休みが終わって、ちょうど今、部屋が空いてるんだよ。俺の生活を助けると思ってサ。どうせ二人の分は軍の金だろォ?」

「あなたの生活は、僕には関係ないと思うんですけど・・・・・・」

 無色は渋っていたが結局根負けした。

 いつも使っているというホテルに電話したところ、三人分の部屋は用意できないと言われたのが決定打になった。

 監視する以上、同じ場所に泊まったほうが良いということで、三人ともマスターの民宿に泊まることになったのだ。