しゃらん、しゃらん。

 土砂降りの雨の中を走って、店内に駆け込むと、扉から吊り下がった貝殻が、涼しげな音を立てた。

 Peace Pieceと書かれた喫茶店の看板が、扉の外で揺れた。

 扉が閉まり、雨音が遠ざかる。

「いらっしゃい、お好きな席へどうぞ」

 カウンターの奧から、日焼けした格好いいマスターが声を掛けた。

 少女は入り口のマットでサンダルについた砂を軽く落とし、ワンピースの裾を軽く絞った。

 それから他の客が誰もいない店内を見渡して、窓辺の席に座った。

 被っていた白い帽子をとって、隣の椅子の上にそっと乗せる。
 長い長い真っ白な髪が揺れた。

「突然降ってきたから、大変だったでしょ」

 軽い口調で言いながらタオルを持ってきてくれたマスターが、少女の顔を見てあれ、と目を丸くした。