「里穂~いい加減離れてくれないかな?」


「ヤダ」


「はぁ~」


修斗が大きなため息をつく。


今日何回同じ会話を繰り返したことか。


3月上旬、今日は修斗と最後のデートの日。


でもなんかやっぱり離れるのが寂しくて、待ち合わせ時間より早く修斗の家を訪ね、自分の部屋でベットに座り雑誌を読んでた修斗に、思いっきり抱きついた。


最初は驚いた表情をしてた修斗だったけど、私の行動を理解してくれたのか、黙ったままギュッと抱きつかせてくれてたけど、一向に離れる様子のない私に痺れを切らしたのか、さっきから離れろの言葉が多くなった。


「里穂、出掛けるんじゃないのか?」


「そうだけど」


明日修斗は、FCウイングの寮に入る。


そして私も、家を出ることにした。


大学までは家から電車で1時間半。


通えない距離じゃないけど、早く独り立ちしたくて、一歩大人に近づいた修斗に置いて行かれたくなくて、親にワガママを言い一人暮らしを許してもらった。


私が家を出て行くことによって、修斗との距離がまた遠くなる。