彼女の伸ばした手に操られるように、その口の中をまさぐる。

そこは全て俺のモノだと言わんばかりに、いささか乱暴に。

激しくすればするほど、彼女は俺を求めた。俺も彼女に応えた。

ずっと、こんな風にいられると思っていたんだ。

俺は、バカだった。



ある日、俺は唐突に彼女に捨てられた。

何の前触れもなかった。いや、なかったと思っていたのは俺だけだったのだろう。

俺を捨てるとき、彼女は明らかに俺を侮蔑の目で見ていた。

汚い、役に立たない男ね、そういわれている気がした。

俺は、彼女に何をした?何をしてしまったのだろう?



しかし実際のところ、彼女は俺を完全には捨てなかった。

別の関係になりましょう、そんな意味のことを彼女は言っていた気がする。

俺は家に来たらしい次の男と顔を合わせることもなく、彼女との新しい関係を楽しんだ。

それも、長くは続かなかったのだが。



「さて、今日はやるわよ」

彼女はそう言うと俺を連れてベランダへ向かう。

俺の体は薄汚れた網戸に押し付けられた。

何度目か、彼女が乱暴に力を入れた時、俺の体で何かがちぎれる音が聞こえた。



はなっから分かっていたことだ。もう俺は前の俺ではない。本当の意味では彼女に触れる事もかなわない。

ブサイクな女に当たらなかっただけ、幸せだった。そう思おう。そう思って、死んでいこう。

ラスト1箇所、そう言って彼女は俺を連れてキッチンへやってきた。

シンクの隅で、俺は最期の仕事を終える。



「さすがにもう使えないわね」

彼女がそう言葉を発すると、俺はゴミのように、今度こそ完全に捨てられた。